82-ラムネド。
「おまえたちはだれだ?」
おびえるように樹の根元に寄りかかって座っているコウモリの子を、囲むようにして座っているマホロバニカのこどもたちです。
「なんで君・・・おまえは震えてるくせにそんなに偉そうなんだ。だいたいおまえこそだれなんだよ」
ハーネルは彼の態度にかなり頭にきているようです。
「人に名前をたずねるんなら、まず自分が名のれよ。
だいたい、けがをしてのびてるところを助けてもらってそんな口をきくか?
傷の手当までしたんだ。感謝しろよ」
「望んで手当てをしてもらったわけではない。それに手当てをしたのはおまえでなく、そこのキツネと、オコジョだ。
さらに言うなら、最初ぼくを運んだのはおまえではなかったぞ。おまえとそっくりのもう一人のウサギだ」
「うぅ。こいつよく覚えてるぞ」
「もうよせハーネル。頭のほうも打って、ちょっとおかしくなってるのかもな。
おれはトビー、こいつはおれの弟でハーネル。それから・・・あとは各自でどーぞ」
と言ってコンラッドを見たので、
「・・・コンラッドだ」
「ぼくはポンゴ。最初に君が倒れてたのを見つけたのはぼくなんだよ」
「あたいはコト。傷はまだ痛か?」
「わたしはコロン」
「わたしはチュチュ。バレリーナになるのが夢・・・あ、それはいいか」
「ユキよ。全員マホロバニカからやってきたのよ」
「え?マホロバニカ? 本当か?」
おびえているような男の表情が少しやわらぎました。
「で、おまえ・・・あなたさまはどなたで? 王様」とハーネルはいやみな言いかたをしてみました。
「ぼくは王様じゃない」
「わかってるよ、そのくらい。言ってみただけ」
「ぼくは王様じゃない。王子だ」
はあ?・・・・とハーネルは大げさに耳に手を当てています。
「ラムネド。アンブレロッサのラムネド王子だ。傷の手当てと介護に・・望んだわけではないが・・その・・感謝する」
「まじかよ」とつぶやくトビーに、
「んなわけないじゃん。からかってんだよ、おれたちを」とハーネルはラムネドと名のったコウモリの男の子に聞こえるように言いました。
「どこまでも無礼なやつだな、おまえは。だがいまは許そう。
ときに、浮きガスダンスコンテストはもう始まっているのか?」
「おれたちに聞いてる? あのなあ、おれたちは今朝ここに着いたばかりで、祭りのことは知ってるけど、ダンスコンテストのことなんて・・・」
とハーネルが言うのをユキがさえぎって
「まだよ、ラムネ王子。日が落ちてから始まるって聞いてるわ」
「ラムネド王子だ。ラムネではない。だが・・ありがとう」
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