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2011年5月 6日 (金)

81-わがままな患者。

「ううっ・・」
トビーの背中でコウモリの男の子が、しぼり出すようにうめき声を上げ、うっすらと目を開けました。
「気が付いたかい? もう大丈夫だよ」
「ここはどこだ?・・・おまえたちはだれだ?」
声に力がありませんが、なんだか偉そうな言い方です。
「ぼくに何をしている。・・・足が痛いぞ。ぼくを降ろしたまえ・・・」
「ダメだよ。足をけがしてるんだから」
トビーがそのまま歩いていくのでコウモリの男の子はトビーの耳をぐいっと引っ張りました。
「いてっ! おいおい、むちゃするなよ。君を落っことしちゃうじゃないか」
「ぼくを降ろさないからだ」
このコウモリの子はわがままなようです。
トビーが立ち止まったので、ほかのこどもたちも二人の周りに集まってきました。
「どうしたの?」
ユキがトビーにたずねました。
「下に降ろせってきかないんだ。こいつけがしてるくせにおれの耳を引っ張るんだぜ」
トビーは少し腹が立ってきたみたいです。
「あら、この子の足から血が流れ出してる!
一度降ろして傷のぐあいをみたほうがいいんじゃない?」
しかたなくトビーは男の子を草むらに寝かせました。
トビーたちを見て男の子はとても怖がっているように見えます。

81「これを塗るとよかよ」
いつの間に摘んだのか、コトの手には血を止める効果のある草や葉が握られていました。
「あたしん育ったサクラ岬の森に、これとよく似た葉がいっぱいあって、けがをしたらあたいげのばあちゃんがよく塗ってくれたとよ」
「よく似た葉っぱ・・・って、大丈夫?」
「こことよく似たぬっかとこ(暖かいところ)じゃっで、おんなじじゃっ」
ハーネルやコンラッドの心配をよそに、コトは近くにあった棒切れと石を使って、もう葉っぱをたたいたりすりつぶしたりしています。
「だれか、傷口に当てる葉っぱを採ってきてくいやんせ」
するとコンラッドが、これでいいかな?と、しばるためのツルも一緒に持ってきました。
「おまえたち、それは本当に大丈夫なものなのか? そこの女子、おまえは本当にくすしの心得があるのか?」
コウモリの男の子が一番心配顔をしています。
“くすし”という言葉の意味がわからなかったこともあり、コンラッドはまったく聞こえないふりをして、コトから受け取ったすりつぶした薬草を傷口に練りはじめました。
「怖がらんでもよかよ」
「うわーっ! もっとそうっとやれ・・・痛いぞ・・」
「うぜらしか(うるさい)。 静かにしやんせ!」
コトがピシャリと言いました。
コウモリの子にコトの言葉が理解できたかどうかはわかりませんが、口をつぐんでくれたので、コンラッドはなんとか大きな葉っぱを包帯のように足に巻くことができました。
「あんたうまいわねぇ」とユキがコンラッドの手元を見つめているので、
なあに、足を骨折したとき、ヒーゲル先生が包帯を当ててくれるのを見てて覚えたんだと、コンラッドは照れくさいのでちょっとすまして振り返りました。


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