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2011年4月27日 (水)

80-捜索。

そのころ浮きガス研究所では、リカ機関長が浮きガス増産計画に関する詳細を聞きだすことができ、話し合いは一段落しました。
でも研究員助手がいまごろになって、こどもたちだけで外出をさせたことを報告に来たので、ヒーゲル先生が大変困っていました。
パックさんやトブカ所長があやまり、研究員助手に怖い顔をしています。
「彼女をせめるわけにもいかん。彼女一人にこどもたちをまかせっきりにしてしもうたわしが悪いんじゃから」
「おれとリカですぐ捜しにでかけますから、ドクターは心配しないでしばらくここで帰りを待っていてください」
パックさんはリカ機関長を連れて所長室を出ていきました。

「もうすぐ日が暮れる。急ごう」と二人が浮きガスエレベーターに乗り込んだとき、風を切る音がしたと思うと、ゴンドラの手すりにワタリノフ航海士が立っていました。
「テツヤーノ! いいところに来てくれたわ」
エレベーターはもう下がり始めています。
ちょっと驚いた顔をしているワタリノフ航海士を、リカ機関長はパックさんに紹介し、いまからこどもたちを捜しにいくいきさつを大急ぎで話しました。
黙って聞いていたワタリノフ航海士は
「なるほど。実は例の件に関して興味深いことがわかったので、ピット船長たちに報告して、それで君たちを呼び戻しに来たんだ。
自分も空から捜索を手伝うよ」
地上につくと、なんとそこには所長室にいるはずのヒーゲル先生が待っていたではありませんか。
80「遅かったのう」
パックさんが何か言いかけたのを片手を挙げて制して、ヒーゲル先生が続けます。
「いや、君らの言いたいことはわかっておる。
わしがカモシカ族だということを忘れておらんかね?
急勾配(こうばい)の下り斜面を降りるのはわしの得意中の得意なんじゃよ」
「まさに・・・そのようですね、ドクター」
尊敬の念をこめてヒーゲル先生を見つめなおす三人に向かって、
「わしの大事なこどもたちじゃ。じっとしておられんのじゃ。さあまいるぞ」
と言ってすぐさま研究所の裏へ向かっていきました。
パックさんが、そっちには道はありませんよドクター、と呼び止めたのですが、すでにヒーゲル先生の姿は見えなくなっていました。
「やれやれ、ミイラ取りがミイラにならなきゃいいけど・・・」とつぶやき、リカ機関長とパックさんは浮きガスの樹林に、ワタリノフ航海士はふたたび空に、それぞれ別れて出発しました。

     ●

カズラモドキを両腕に抱えなおして立っているコロンを、いったい何が起きたんだという顔をしてみんなが見ています。
「殺してないわよ。気絶してるだけだから」とコロンは言って、少し離れた草むらにトカゲを置いて戻ってきました。

「どんな手品を使ったんだ・・・?」
「やっぱりクマ族ね。すごい力だわ」
驚くみんなにコロンは、これはいわゆる力じゃなくて、“勁力(けいりょく)”といってわたしがチュイナンから来た拳法の先生から学んでるものだと説明しました。
「拳法のことはまた今度にして、それよりいまはそのコウモリ族の子の手当てを急ぎましょう」
「コロンの言うとおりだ。まず、かまれて足に付いたそのドロッとした液を、そこの川で洗い流したほうがいいね」
ポンゴとコンラッドがコウモリの子を抱えて連れてゆき、そうっと手で水をかけて洗いました。
「よし、すぐ浮きガス研究所に戻ってヒーゲル先生に診てもらおう」
おれとハーネルが交代で背負うからと、トビーがまずその子を背負いました。


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