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2011年4月13日 (水)

76-パーティーへのお誘い。

「みんな足元に気をつけるんだよ。降りたら立ち止まらないで奥へ進んでくれ。
君は先に所長室に向かってて」
とリカ機関長に先を促しながら、パックさんはこどもたちが浮きガスエレベーターから降りるのを手伝ってくれました。

「パックさん、この魚はどうするね?」
最後に降りるヒーゲル先生が、エレベーターの中においてある魚の入ったビクを覗き込みながらたずねました。
「あとで所長のうちに持っていくんで、そのままでかまいませんよ、ドクター。
先生たちも今夜はおれたちと一緒にサシミパーティーを楽しみませんか?
サシミ以外にもうまいものがたくさん揃ってますよ」
ヒーゲル先生は乗り降り用にかけられた板を注意深く渡りながら、サシミの味を思い出していました。
「そりゃいいのう。久しぶりに新鮮なサシミをいただいてみたいもんじゃ。
じゃがのう、今夜はちとムリかもしれんな・・・・」
ヒーゲル先生も本当はこどもたちに、久しぶりに新鮮な食事をとらせてやりたいのですが、これからおこるかもしれない“何か”のことが気がかりなのです。
そんなことは知らないパックさんは熱心にパーティーに誘ってくれます。
76 「どうせタワーホテルなんでしょ。食事と宿泊は。確かに部屋は豪華だけど。食事は絶対こっちですよ!
所長んちはけっこうデカイんでみんなが寝るところなら心配ないですから」
パックさんとしては、久しぶりのお客さんなので嬉しくてしょうがないようです。
サシミのさばきかたも披露したいとか、パーティーは大勢のほうが断然楽しさが違うとか、いろいろ並べたてています。
「困ったのう。
こどもたちの責任者・・・校長代行が船長と飛行船に残っておるんであとで相談せにゃならん。それに判断をくだすのは船長なんでな・・・」
「飛行船には後から使いを出して、船長さんたちもこちらに案内しますから」
パックさんはどうあってもみんなを招待したいようです。
「そうじゃな、むしろ所長さんのところにこどもたちをあずけておいたほうが安全かもしれんな・・・」
「安全?何のことです?」

「白ヒゲ先生!」
何を立ち話してるの?早く中に入ろうよぉと、ハーネルがこちらに手をふっています。
「おー、いま行く。年をとると君らのようにかけだせんのでな」
ハーネルにそう応え、パックさんには小声で詳しいことは中で話そうと、所長室に向かう階段を上がっていきました。

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