73-パックさん。
「リカ先生・・・じゃなかった、リカ機関長。ここが研究所ですか?」
こどもたちに即席で授業をしたので、ユキはつい先生と言ってしまいましたが、リカ機関長は嬉しそうです。
「研究所はもう少し先の、ちゃんとした地面の上にあるわ。
この樹は研究所から一番近くて、使い勝手がとてもよかったからよく通ったところなの」
リカ機関長は樹にかかっているはしごに手をかけながら答えました。
「だれかと思ったら、リカじゃないか!」
突然どこからか声が聞こえました。
「おーい、こっちだ。樹の裏側だよ」
「まあ!!パックじゃない!
何してるの?こんなところで」
「それはこっちのセリフだろ」
パックと呼ばれた人は、ボートでこちらに向かってきました。
「浮きガス研究所のパック研究員よ。それとも、もう所長になったのかしら?」
「まだ研究員だよ。トブカ所長があいかわらず元気に頑張ってるよ。
もちろん君と仲良しだったパラソラもね」
リカ機関長は以前の同僚をみんなに紹介しました。
パックさんはバク族ですが、マーレイバクではなくて、アメリアから来たアメリアバクです。
リカ機関長と同じで、浮きガスの研究と研修のためにこの島にやってきましたが、ここの生活がとても気に入って、研修期間が終わってもずっとこの島に残っているのだそうです。
「それよりここで何してたの?」
お祭り好きのパックが街にも行かないでここにいることが、リカ機関長は不思議でなりません。
「男が一人ボートに乗ってたんだぜ。あれしかないじゃないか」
と、ボートを指さしました。
こどもたちも一緒にそのボートを覗き込むと、入れ物の中に色鮮やかな魚が数匹はねているのが見えました。
「つり?」
「そうさ。今夜の食事用にね。浮きガス祭りのパーティが所長んちであるんだ」
「あら、そうだったの。
ムニエル?それともトロピカルソテーかしら?」
「何言ってんだ。“サシミ”だよ。こんな新鮮なもの、それしかありえないだろ」
リカ機関長もヒーゲル先生も、こどもたちもちょっとびっくりしています。
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