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2011年4月 4日 (月)

72-命の環(わ)

「こういうのを“命の循環”って言うのよ」
「ジュンカン?」
「めぐり回っている、ってことね。
その中のどれか一つでも欠けたら自然のバランスがくずれてしまうわ」
リカ機関長は一人ひとりのこどもたちの顔を見ながら話しています。
でも意識してこどもたちの顔を見ているわけではありません。
こどもたちが顔を、目を、きらきら輝かせながらリカ機関長の話を聞いているので、むしろリカ機関長のほうがこどもたちの顔に吸い寄せられている感じです。

〈カケローニ先生がちょっとうらやましいわ〉と思っているとポンゴが手をあげました。
「はい、ポンゴ君」と質問をうながしました。
「目に見えないようなプランクトンでも?」
「ええ、もちろんよ。
彼らがいなくなったら、死んでしまった水の生き物やふんがそのまま腐ってしまい、水が汚れてしまうわ。
すると水の生き物もすめなくなるし、スイテンドウの周りもコケだらけになり、オオミツボカズラも水中から栄養もとれなくなるし、呼吸もできなくなってしまうのよ」
リカ機関長の話はもう少し続きます。
72 彼女は普段は研究者として暮らしているので、大勢のこどもの前でこんなに長く話すことはありません。
「命の循環は、わたしたちが暮らす里山や陸の世界でも同じよ。
この星のすべての命はつながっているの。
だからそのバランスを崩すようなことはしてはいけないし、しないような生活を心がけなきゃね」
最後はこどもたちにというより、むしろ自分自身に向けての言葉かもしれません。

教室の中での授業と違って、野外で実際に自然に触れながらの講義なので、みんなの頭の中にすーっとリカ機関長の言葉が入っていくようです。
耳からだけでなく、目からも、いえ、からだ全部を使って学ぶことが、この冒険授業の目的なんだよと、ブライトン校長は以前にこどもたちに話したことがあります。
もちろんこどもたちはその話そのものを覚えているわけではありません。

「わたいらはおてんとさまの恩恵で生きていられるんじゃっち、あたいげのばあちゃんが言うちょったとよ。
じゃっで世界中ん人たちはおてんとさまに感謝しなきゃやっせんじゃっち」
コトがそう言うと、チュチュは
「空にあるたった一つのおてんとうさまで、世界中を幸せにしてるんだね」
と言いながら、コロンが差し出したココナッツミルクのストローをくわえ、おいしそうに飲みました。
そして
「ココナッツミルクもわたしたちを幸せな気持ちにしてくれるわ!」
と嬉しそうに付け加えました。

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