64-ビーチでランチ。
「これまで順調に飛行を続けたので、きょうのお昼前には予定どおり、最初の寄港地マングラップ島に到着できそうだ」
カケローニ先生の言葉を聞いて、たれ下がっているトビーとハーネルの耳が少し上がりました。
「2限目からは授業をやめにして、下船の準備をすることにする」
トビーとハーネルの耳がさらに上がりました。
「昼食は食堂でとっとる時間がないんで、これからみんなでお弁当を作って、島に着いたらビーチでランチタイムだぞ!」
トビーとハーネルの耳は完全に元のように立ち上がっています。
横で見ているユキやコロン、チュチュたちは笑いをこらえています。
「君たちわかりやすいね・・・」
とポンゴがぼそっと声に出して言ったので、キャビンに笑い声が響き、こどもたちは完全に試験の緊張が解けたようでした。
笑いの対象となった二人はポンゴをちょっとにらみましたが、肩をすくめながら
「何ごともわかりやすく、ってのがムーン家のモットーなんでね」
「そう、陰日なたなく生きてんだから、おれたちは」
とみんなに向かって胸を張りました。
ようやく二人にユーモアが戻ってきました。
「寄港の目的は食料の補充、浮きガスの樹の点検、それからこのオデッセイそのものの整備だから、わたしたち大人はそれぞれの作業を手分けしてやらんといかん。
ヒーゲル先生が君たちとビーチに行くことになっとるから、面倒をかけんようにな」
カケローニ先生が、本人たちに気づかれないようトビーとハーネル、コンラッドのほうをさりげなく見たのをユキが気づき、
「だいじょうぶです。わたしがついていますから」
と返事をしました。
「キャビン前方の窓からマングラップ島が小さく見えたぞ」
「久しぶりの地上ね」
「早く地面の上を飛び跳ねたいな」
「そう、ふわふわ揺れない大地をね」
「海も楽しみ! だってわたし海に近づくの初めてなんだもん」
厨房でこどもたちが、マングラップ島での自由時間に期待をよせてにぎやかに昼食用のお弁当を作っているころ、カケローニ先生は船長たちと、島に着いたあとのことについて最後の打ち合わせをしていました。
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