60-なごみ系の人。
操舵室の空気が少し軽くなりました。
もちろんそれは、浮きガスが漏れてきたからではありません。
むつかしい問題を解決していくためには心に余裕がなくてはなりません。
こういうとき“ユーモア”がとても役に立ちます。
カケローニ先生やリカ機関長の会話がこの場の雰囲気を明るくしてくれました。
「確かにカケローニ君はムードメーカーとしても勤めをはたしておる・・・」
ヒーゲル先生は、つくづくブライトン校長の人選に感心せずにはいられませんでした。
ただしカケローニ先生は世間で言うところの“天然”らしいので、本人はいたってまじめに話をしているつもりでいます。
「結局のところ、わたしの体験談は参考になったんでありますか、船長?」
「ええ、ありがとうございましたカケローニ先生。
おかげで少し明るくなってきました」
「そのようじゃのう船長」
ヒーゲル先生もうなずいています。 「すると今度もカラスとイタチがやってくるんですね?」
カケローニ先生は、今度こそ頭をつつかれないように退治してやるぞと言わんばかりに、左手で頭をおおいながら右手で棒を振り回すような動作をしています。
ピット船長は苦笑いをしながら、
「いやいや、相手の正体はまだわかりません。
これはあくまでわたしの推測ですが」
と前置きをして船長は続けました。
「今回の飛行計画は、飛行船協会を通じて世界中の寄港地に知らせてあることはご存知でしょう。
食料の補給や浮きガスの樹の点検、飛行船全体の整備なんかをするためです。
その飛行航路計画書にしたがって、世界郵便協会のほうも対応してくれています」
「その計画書が流出したんですね」
と気の早いカケローニ先生に、ワタリノフ航海士が船長に代わって答えました。
「特別な秘密の飛行でないかぎり、“誰もが”“必要とあれば”その計画書を見ることができるんですよ。
特に貨物飛行船だと、いろんなところからの集配荷物を積み込んでいるんで」
「はぁ、なるほど・・・」
と、少し気抜けしたカケローニ先生です。
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コメント
こんばんは
カケローニ先生は、天然で勘違いとか色々してそうですが、ふらふらしているハーネルやコンラッドを両脇でかかえてささえてあげてたりちゃんと大切なことを理解して実行している素敵な人だと思います。
きっと先生はユーモアとセンスにあふれた子供と大人の同居する不思議な人なんですね!
投稿: ナカムラ | 2011年1月21日 (金) 17時50分
こんばんは。
カケローニ先生にもファンがついて大喜びです。
不器用そうでいて、心はけっこう繊細なカケローニ先生は、これからもボケをかましつつ、みんなの気持ちを癒してくれると思います。
本日もありがとうございました。
投稿: ミム | 2011年1月21日 (金) 22時15分