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2011年1月19日 (水)

59-略奪訓練。

「食糧不足だったころ、陸地でもよその里山の畑を荒らしたり、食料の盗難がよくありましたわ。
わたしの家の畑も何度か被害にあったから、父や兄とよく畑を見回りましたもの」
とリカ機関長もそのころのことを思い出していました。

ピット船長も空中をにらみながらしばらく考え込んでいましたが、
「カケローニ先生の話を整理すると、その襲撃はどうも訓練だったように思われますね」
と言いました。
「いやいや、わたしたちの実習訓練にはそんな項目は入っておらんかったですよ」
カケローニ先生は心外だな、というような顔をして否定しました。
船長は手を左右にふりながら
「いや、そうではなくて、海賊のほうの」
「は? 海賊のほうの訓練?・・・ですか?」
カケローニ先生だけでなく、ほかのみんなも意外な顔をしました。

59 「つまりこういうことです。
食料を奪うということが目的の一つであったことはまちがいありません。
その時代の流れからしても。
しかし、本当に食料を確保したければ、積荷の少ない実習船を襲うでしょうか?
襲撃の成果が目的だとしたら、貨物運搬船を襲うほうが効率的です」

「なるほど・・・」
みんなうなずいています。
「じゃとすると」
と言うヒーゲル先生の言葉をついで、
「相手方、つまり海賊も実習船での略奪訓練中だった可能性が高い」
と、ようやくカケローニ先生も納得しました。
「陸の種族と海の種族との共同作戦がどれだけうまくいくのか、やつらなりに考えたわけですな」
「そして絶妙の連係プレーで積荷を手に入れた。
作戦大成功ですわね」
「リカ機関長、変なところで関心せんでください」
カケローニ先生、ちょっと苦い顔をしています。
「あら、ごめんなさい。
わたし、異なった種族同士の交流や協力っていうのに関心があって、ちょっと感動してしまって、つい・・・」
機関長は顔を赤らめカケローニ先生に謝っています。
「リカ機関長は生物、化学以外にも、“異種族間の社会行動学”も研究されてますからねぇ」
心に余裕ができたのでしょうか、ワタリノフ航海士が話に追い討ちをかけています。
みんなの顔には少しずつ笑顔が戻り始めています。

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コメント

こんにちは

50-人との出会い。で、
われわれはこれからもこの星で共に互いを尊敬しあって生きてゆき、次の世代に引き継ぎたい。
というところがありますが、これも10年ほど前にあった議論ということですが、
その時から既に組織的な共謀が裏では働いており、光と影が出来上がっていたということなのでしょうか・・

前回はお役に立てて嬉しかったです!
湯たんぽを気に入って頂けたようで(゚ー゚)

後、今回気になったのが
>陸の種族と海の種族との
です。
よろしくお願いします。

投稿: ナカムラ | 2011年1月19日 (水) 14時24分

そうなのです。
光あるところに影があるごとく、どうも善意の集団ばかりではないようです。
いえ、一人の人間の中にも光と影は同存しています。
願わくは光の比率の多からんことを・・・。

大変よく読んでくださってありがとうございます。
普段の会話だと例えば「あなたとわたしの関係」などと言ったりしますが、本当は「あなたとわたしとの関係」というように、2つのつながりをより強めたりする場合は上記のようになるようです。

また気づいたことがありましたら、ぜひお知らせください。

投稿: ミム | 2011年1月19日 (水) 21時02分

全てのことが陰陽でわけることができ、
陰陽が依存し関係し合うことで成立する。
でも、現代社会では陰の比率が強くなる余り、社会も個人の心もバランスを崩しているのかもしれませんね。
それだけ闇の力とは強いのかもしれません。

また気づくことがあれば発言させて頂きます。

投稿: ナカムラ | 2011年1月19日 (水) 22時28分

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