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2011年1月17日 (月)

58-ならず者の正体。

「10年ほど前のことです。
そう、実習訓練を終えた夕暮れ少し前、やつらは、突然襲ってきました」
と、両腕をバタバタさせたりからだを上下に揺らしたりしながら、カケローニ先生が話し出しました。
「船の甲板の上に立っている相手ならわたしたちも手が出せるんですが、何しろ頭の上から、はたいてもはたいても・・・」
身振り手振りは大きいのですが、なかなか話が先に進みません。
仕方がないのでヒーゲル先生が、いつものように白いヒゲをなでながら
「ふむ。大変じゃったの。
カケローニ君、全体その、ナンじゃ、ならず者どもの正体はなんじゃったんじゃね?」
と、みんなが一番知りたいことをたずねてくれました。
ピット船長やワタリノフ航海士もちょっとほっとした顔をしています。

「ここからがいいところなんですが・・・」
カケローニ先生としては、もう少し話したかったのですが、
「カラスたちです。
正確にはカラスとイタチ族の混合部隊でした」
「イタチ族も?」
「わたしたち乗組員がカラスたちとやり合っているあいだ・・・、まあ、やられっぱなしでしたが、そのあいだにイタチたちが、みごとに積荷を運び出していってしまったというわけです。
海上警察のパトロール船が到着したのは、それからずいぶんと経ってからです。
実習船だからたいした荷物は積んでいなかったので、それほど損害はなかったのでありますが」
いま思い出しても悔しい、と言いながらカケローニ先生はこぶしを握りしめました。

58 「海上警察もまさか実習船が襲われるなんて想像もしていなかったのでしょう。
10年ほど前といえば、気候が悪くて世界的に食料が不足していたころですね」
「ええ、食料の箱だけをまんまとやられました」
「人的被害はどうでしたか?」
船長らしく、ピット船長は乗組員そのものの安否を気にかけています。
「そこです、不思議なのは。
カラスたちは鋭いくちばしでつっつく程度、イタチたちも別段武器のようなものを持っている気配はありませんでしたし、こちらも、もちろんそんなものを積んではおらんかったので、負傷者が出るということはなかったですね。
みんな、まあ、せいぜいカラスに頭を数回つつかれてちょっと血が出たくらいでした。
わたしはカラスの爪で引っかかれたり、イタチにけとばされましたが、そんなことでひるむ私では・・・」

「よくわかりました、カケローニ先生」
話がまた横道にそれないうちに、ピット船長がカケローニ先生にたずねます。
「人的な被害がなかったのが不幸中の幸いだったようですが、今回も同じような相手でしょうか?
校長先生からの連絡には、相手の情報について何か書いてありましたか?」
「具体的なことはわからんようです。
校長の友人のフクロウ族の人が、里山地区の裏情報として、空で何か不穏な動きがあるようだと知らせてきたと書いてあるだけなんです」

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コメント

こんばんは

これは由々しい問題ですね。
10年前に人的被害はなかったとしても、
それ以降、対策はたてられているのか。
人的被害が出ても対策を討てない
別の星を思い出します。
この先の話の続きが気になります。

カケローニ先生は湯たんぽみたいにあったかい可愛い先生ですね

投稿: ナカムラ | 2011年1月17日 (月) 17時48分

湯たんぽ!
まさにぴったりの形容です!!
いつかカケローニ先生の形容に使わせていただきます。
この星に湯たんぽが存在するという、必然的な設定を考えねば。

コメントを元に今回分2箇所加筆しました。
この先の展開の伏線として役立ちました。
ありがとうございます。

投稿: ミム | 2011年1月17日 (月) 22時36分

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