52-午後は自習に。
スイーティア集配員が去ったあとのキャビンでカケローニ先生は、
「ブライトン校長からわたしたちあてに便りが届いたぞ」
と、みんなにその手紙を見せました。
「わたしたちが出発してから3日後に行われた“ミノール・市民音楽祭”のことが書いてあるぞぉ」
「そうだったわね。
毎年楽しみにしてたのに、今回は冒険授業と重なったから・・・」
「うん、今年は市の記念事業と合体して、プロの演奏家たちの演奏も行われたんだよな」
「聴かれなくてちょっと残念」
「去年はぼくらの学校がコーラス部門で優勝したから、ほかの・・・・」
こどもたちが音楽祭のことを話し始めたとき、カケローニ先生がせきばらいをして
「えぇ、わたしは後でじっくり読ませてもらうから、みんなで読んでてくれ。
わたしはピット船長に呼ばれているので、これから操舵室に行ってくる」
と言って手紙を近くにいたポンゴに渡し、もう駆け足体勢に入ろうとしています。
「先生、午後の船内実習は?」
「あ、そうだな。
きょうの午後の船内実習は急きょ中止になったから、各自あすの計算盤の試験勉強でもやっててくれ」
そう言いながらカケローニ先生はまわり階段のところまでかけ出しかけて立ち止まり、
「あ、それから、リカ機関長もヒーゲル先生も操舵室にいるから、急用があったら呼びに来てくれ」
と付け加え、また階段を上りかけました。
みんな事情がよくわかりません。
「先生、何かあったんですか?」
というこどもたちの質問には答えず、カケローニ先生は
「あとでブライトン校長からの手紙を読むのが楽しみだな。
みんなも久しぶりにのびのびと午後の時間を楽しんでくれ」
と言い残し、操舵室までかけていってしまいました。
「またまたカケローニ式臨機応変?」
「どうしたのかしら?
とても慌ててらしたわ」
「かけ出すのはいつものことだけど、いつもの笑顔はなかったね・・・」
こどもたちはちょっと心配になりましたが、校長先生からの手紙の方が気になっていたので、とりあえずみんなで読むことにしました。
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