47-空の種族。
「ほかには?」
「はい!」
「よし、ハーネル」
ハーネルはコンラッドを見ながら
「おまえ肝心なところを抜かしてるぞ。
この郵便システムの一番のキモは、空の種族の存在なんだから」
ハーネルは“存在”という難しい言葉を使っている自分をちょっと誇示しながら話し始めました。
「空の種族と“手を組む前”にだって海を隔てた地域に手紙や物を送っていたんだぜ」
「ハーネル、コンラッドにではなく、わたしやみんなに話すんだ。
“いたんだぜ”はないだろ?」
「あ、そうでした。ごめんなさい」
コンラッドが小声で「ばーか」と言ったのをハーネルの耳は聞き逃しませんでしたが、いまは聞かなかったことにして続けることにしました。
「陸の種族は船を利用して何ヶ月もかけて郵便を運んでいましたが、空の種族、特に渡り鳥族の人たちの協力で郵便の集配がとてもじん速にできるようになりました。
いろんな国や地域、海の上では島などに支局ができ、そこを中継地として世界中にぼくたちは手紙を送り、同じように世界中から受け取ることができるようになりました」
「二人ともよく勉強したな。
もちろん小包や大きなものはいまでも船を使ってるが、手紙に関して言えば、本当に空の種族との連携なくしてはありえなかった」
今度はチュチュが手をあげました。
「わたし、フロンシェにいる女の子とバレーについて手紙のやり取りをしてます。
実際に世界郵便を使って文通しているのでよくわかります」
「そうか、ちょうどいい。せっかくだからチュチュ、みんなにそのことを話してくれないか?」
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コメント
こんにちは


今回のお話は、得意気なハーネルが子供らしくて可愛いですね
せっかく誇示したい場面で、先生に叱られてコンラッドは「ばーか」と言ってますが、反応している時点で、多分その子はその場の誰よりもハーネルの言葉や行為(覚えなくて良い部分)まで吸収していて、次からは無意識のうちにハーネルと同じように余計なことまで先生の前で言うようになってしまうという悪循環なやりとり?ですね。子供同士が変なことをマネしあうのを思い出しそう思いました。
この世界は世界郵便協会みたいな組織があり、何となく太古の動物の化石がそこら辺の地層に埋まってるような・・そういう研究がされていてもおかしくないくらい広がってる世界ですね。
この童話には、いつも静かでおだやかな時を過ごしているようなやすらぎを感じます
投稿: ナカムラ | 2010年12月20日 (月) 17時34分
ナカムラさんへ。
ハーネルとコンラッドとのやり取りを書くときが、なぜか私は一番楽しいです。多分、いえ、ほとんど私は“彼ら系”です。
「いつも静かでおだやかな時を過ごしているような」状態にいる彼らは近いうちに世間の風に当たって慌てふためくことになるでしょう・・・ムフフフフ。
お楽しみに。
今日もありがとうございます。(ミム)
投稿: ミム | 2010年12月20日 (月) 22時24分