37-医務室で。
――――何か白いものが見える・・・・。
ボーとかすんでるけど、見おぼえあるぞ。
白い、ヒゲ?
「あ、白ヒゲ、じゃなかった、ヒーゲル先生」
「おー、気が付いたようじゃな、ハーネル」
「す、すみません。つい・・・」
「かまわんさ。
気分はどうじゃ?吐き気はないかな?」
ヒーゲル先生がハーネルの寝ているベッドに近づきながら言いました。
「あのぉ、どうしてぼくはここにいるんでしょう?
浮きガスを吸って、からだが浮き上がって、また落っこちて・・・そこまではおぼえていますが」
「やれやれ、おぼえておらんのか。
カケローニ先生が君ら二人を介抱(かいほう)して、この医務室に運んでくれたんじゃよ」
「あ、だんだん思い出してきました。
船内見学ツアーの途中だった!
動力室のあとはどうなったんでしょう?」
「水天道や巨大金魚ばちの中の説明のあと、4階部にあがって浮きガスの樹の幹の見学と説明・・・
うむ、もうそろそろ操舵室に移るころじゃな」
ヒーゲル先生はいつものように懐中時計を見ながら答えました。
「えーっ。
4階部はすっごく楽しみにしてたのに・・・」
「4階部も金魚ばちも、どこにも行きやせんよ。
この船に乗っておるかぎり、いつでも行けるさ。
おー、コンラッドも目がさめたようじゃな。
気分はどうじゃ?」
「あ、白ヒ・・、じゃなかった、ヒーゲル先生。
「まだ少し頭がふらふらしますが、もう平気です」
ハーネルとヒーゲル先生が顔を見合わせて笑い出しました。
「何がそんなにおかしいんだよぉ」
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