« 34-初めての出会い。 | トップページ | 36-教室でのお父さん。 »

2010年11月15日 (月)

35-浮きガスのチカラ。

声は天井の方から聞こえました。
ハーネルとコンラッドはわざとマスクをはずしてしまったようです。
二人が風船のようにぷかぷかっと天井あたりを漂っています。

「もしガスを吸ったら?あんなふうになってしまうのよ」
リカ機関長はチュチュに向かって答えました。
「だからまちがってもこの部屋ではマスクを取らないように、よい子は注意しましょうね」

「早くおろひてよーっ」
二人は空中で手足をばたばたさせています。
「まずマスクをきちんとつけるんじゃ!」
ヒーゲル先生が指示をしました。

35 カケローニ先生はちょっと心配になってきました。
「吸い込んでもたいした害はないって聞いてますが、大丈夫でしょうか?ヒーゲル先生」
「臨床実験でも別段これといって問題になるような症例は報告されとらんがね。
しいて言えば、こどもの場合多少めいてい状態になることじゃな」
「めいてい・・・酔っ払いですか?」
「さよう。
吸い込んだ量にもよるが、まああのくらいなら1時間ほどでさめるじゃろ。
そうですな、リカ機関長」
「ええ、わたしの場合も10分ほどで酔いがさめましたわ、うふ」
「え、リカ機関長も吸い込んだのでありますか?」
カケローニ先生が驚いています。
「当然ですわ、研究者として。
おかげでこういう“緊急事態”に直面したとき、あわてたりせずに対処できましたし」
「じゃヒーゲル先生も・・・」
「医者として当然のことじゃ。
カケローニ君、君も後学のために一度は吸っておきたまえ」
「わたしは・・・酒が飲めませんから・・・」
「何かかん違いしとらんかね?これは酒ではないぞ」
「そ、そうでした」

「早くおろひてってば~っ」
ろれつの回らない声がひびきます。

「足がとどいたら、壁でも天井でもけとばしなさい。
あまり強くけとば・・・・」
リカ機関長が言い終わらないうちにハーネルが得意のキック力で天井をけってしまい、すごい勢いで床に頭を打ちつけ、はずみでまた天井に戻ってしまいました。
「さっきといい、君は人の話を最後まで聞かないタイプね。
もっと加減してけるのよ」

足の骨折から回復したばかりのコンラッドは、そのゆるいキックが効果的で、宙返りのおまけまでつけて、よろけながらも床に降り立ちました。
「たらいまもどりまひたぁ」
床には立ちましたが、その目はまだ宙を泳いでいます。
コンラッドがふらつきながらあいさつをするのをながめて、ハーネルは空中でとても悔しがりました。

|

« 34-初めての出会い。 | トップページ | 36-教室でのお父さん。 »

A. 連載童話」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 35-浮きガスのチカラ。:

« 34-初めての出会い。 | トップページ | 36-教室でのお父さん。 »