34-初めての出会い。
「空気より軽い気体、わたしたちは“浮きガス”と呼んでいますが、それをあの小さい方のミツボカズラの口、パイプのようなところから出しています。
そして呼吸している間は根の部分がああやって光るのよ」
それはこどもたちが初めて目にした、とても幻想的で、美しい光景です。
「里山で見るヒカリゴケやホタルもきれいだけど、こうして水の中で光ってる樹ってすてきね」
コロンをはじめ女の子たちはうっとりと水そうをながめています。
男の子たちの方は、水そうの中を泳ぐ魚の方に興味があるようです。
自分たちの住んでいるところにある川や池では一度も見たことのない、色とりどりの魚が優雅に泳いでいます。
水そうの底にはエビもいます。
よく見ると巻貝のようなものもへばりついています。
「じゃこの部屋の中は、その浮きガスでいっぱいってことですか?」
おとなしいポンゴがたずねました。
「そのとおり。もちろん害はないわ。
色も、においもないから気づかないけど」
「でも、そんなガスがいっぱいつまった部屋にいて、どうしてぼくらは浮かばないの?」
またまた理科好きのポンゴが質問しています。
機関長は光る根について説明したいのですが、なかなか前に進めません。
「いい質問ね。
わたしたちのからだを持ち上げるより早く上にあがってしまうからよ。
安心しなさい。
ガスを吸いこまないかぎりは心配いらないわ」
「もしマスクが外れてガスを吸っちゃたら?」
今度はチュチュが心配そうにたずねたそのとき、
「わーっ!たすけてー!」
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