32-巨大な金魚ばち。
最初のとびらの向こうにある部屋はとてもせまく2、3人入るのがやっとでした。
まずケミストン機関長が入り、次にトビーとハーネルがきっちりマスクをつけ、最初のとびらをぴったり閉じてから第2の扉を開け、動力室にに入っていきました。
ちょっと怖くなったコロンとチュチュは、けっきょく最後にヒーゲル先生といっしょに入ることにしました。
ヒーゲル先生が最初のとびらを開けると、奥のとびらの向こうからみんなの興奮した声が聞こえてきました。
第2のとびらは思い切ってコロンが開けると、思いがけない光景が目の前にあらわれました。
動力室、つまり3階部の天井までとどく巨大な金魚ばちが部屋の真ん中にあって、その中には見慣れない魚がたくさん泳いでいたのです。
部屋には窓がないためうす暗いのですが、金魚ばちのまわりだけは明るくなっています。
いえ、よく見ると金魚ばちの中にある大きな植物・・・・樹?が光っているようです。
「ケミストン機関長、ちと待たせてしもうたな。
これで全員じゃ」
「ヒーゲル先生、そしてみなさん、これからはケミストンではなくリカ機関長と呼んでください。
さて、みなさんはいま、きっとこう思っているはずです。
動力室なのに、部屋の中にあるのは大きな水そうと、変なパイプのような植物。
船の動力なんてないじゃん、って」
「ちょっと違います。でかい金魚ばちです」
とトビー。
「まったくそのとおりだよ。
キツネにつままれた気分・・・・」
とハーネルが言うと、コンラッドが
「ホント、ウサギにけとばされた気分だな!」
とやり返しました。
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